[Q]:GreenleaとANZCOとのシナジーについて
[A]:まず、本件で見込むシナジーは、生体調達の最適化による工場稼働率の改善、販売面での最適化、そして生産プロセス・物流・ミドルバックにおけるコスト最適化の3点である。
1点目は、生体調達の最適化による工場稼働率の改善である。
Greenleaの工場はニュージーランド北島北部に位置しており、生体調達も主に同地域で行っている。一方、ANZCOは北島中部から南部を中心に生体を調達しており、両社の調達エリアに大きな重複はない。生体調達は、輸送コストや物流効率の観点から、工場に近い地域で行うことが競争優位性につながる。そのため、両社の事業基盤は競合するものではなく、相互に補完し合う関係にある。
また、ニュージーランドの牛肉生産は季節変動の影響を受けやすく、工場の繁閑をいかにマネジメントするかが収益性に直結する。本件により、グループ全体で生体調達の最適化が可能となり、例えばGreenleaで処理しきれない生体をANZCOの工場へ振り向けることで、処理能力をより効率的に活用することができる。その結果、ANZCOの牛肉工場のみならず羊肉工場も含めた工場稼働率の向上が期待できると考えている。
2点目は、販売面での最適化である。
Greenleaの販売先は、ANZCOと同様に米国、欧州、アジア、中国などであるが、Greenleaはニュージーランドのセールスチームのみで販売を行っている。一方、ANZCOは米国、日本、欧州に拠点を有しており、部分肉を中心に、より付加価値を高めた形で牛肉を販売している。本件により、Greenleaが生産する商品についても、ANZCOのセールスチームや販売ネットワークを活用することで、ANZCOと同様の販売手法を展開し、さらなる収益向上を図ることが可能になると考えている。
また、Greenleaはシンプルな生産体制を採用しているがゆえに、一部の副産物についてはレンダリング向けとして販売しており、十分な収益化ができていない。今後は、ANZCOが有する販路やノウハウを活用することで、これら副産物の収益化を進めていく考えである。
3点目は、生産プロセス、物流およびミドル・バックオフィスにおけるコスト最適化である。
生産プロセスや物流については、両社のオペレーションを比較・検証しながら、それぞれの優れた取り組みをグループ内で共有し、より効率的な運営体制を構築していく考えである。これにより、生産面および物流面におけるベストミックスを追求し、コスト競争力の向上を図る。加えて、ミドル・バックオフィス機能についても、業務の統合や効率化を進めることで、間接コストの低減を実現していく考えである。
[Q]:GreenleaとANZCOとのシナジーの定量効果について
[A]:シナジーによる定量効果は、保守的に実現確度を見た上で、2社を合わせて年間税前利益で10百万ニュージーランドドル以上と想定している。現状の想定を上回り、2倍程度の規模となる可能性も十分にあると考えており、実現に向けてPMIを着実に推進し、シナジー効果の最大化を図っていく。なお、効果の発現期間については、すべての効果が顕在化するまでに2~3年程度を見込んでおり、その過程で収益の最大化を図っていく考えである。
また、年間10百万ニュージーランドドル以上としているシナジー効果については、生体調達の最適化、販売面での最適化、コスト最適化が、それぞれおおむね3分の1ずつを占める想定である。コスト最適化についての伸びしろは限定的である一方、生体調達および販売面についてはアップサイドが期待できると考えている。
[Q]:買収後のGreenleaのマネジメント体制について
[A]:買収後のマネジメント体制については、取締役会を通じて適切にグリップを効かせることが重要と考えている。取締役会については、伊藤ハム米久ホールディングスおよびANZCOの双方から取締役を選任し、運営する予定である。
また、ニュージーランド事業においては、伊藤ハム米久ホールディングスからの出向者を増やし、GreenleaとANZCOの間をつなぐ役割を担わせることで、両社の連携を強化していきたいと考えている。
加えて、買収初年度は非常に重要な期間であることから、取締役会の下にPMIチームを組成し、生体調達、販売、ミドル・バックオフィスのベストミックスおよびコスト最適化などのテーマごとに取り組みを進めていく。GreenleaおよびANZCOの両社のリーダーシップチームが連携しながら、各施策を着実に実行していく考えである。
また、現在のGreenlea社長については取締役として引き続きGreenleaに残ってもらう予定である。あわせて、ANZCO社長がGreenlea社長を兼務することで、両社の経営統合を進めていきたいと考えている。
[Q]:ANZCOとGreenleaの利益率の差について
[A]:Greenleaは、ニュージーランドの競合他社と比較してもトップクラスの収益性を有していると認識している。その主な要因は、工場の立地の良さと、シンプルなオペレーションにあると考えている。
一方、ANZCOは事業の中心がカンタベリーをはじめとする南島にあり、Greenleaが拠点を置くワイカト地方ほど、生体調達、生産、販売を高効率に行うことができるロジスティクス環境にはない。また、ANZCOは牛肉事業に加え、羊肉、加工食品、血清事業などへの多角化を進めており、事業ポートフォリオの違いも利益率の差につながっていると認識している。その中で、ANZCOの収益性は2024年と比較して2025年には回復しているものの、現時点ではGreenleaほどの高い収益性には至っていないと認識している。
加えて、北島は酪農が盛んな地域であり、牛の飼養頭数も比較的多い。一方、南島も酪農は盛んであるものの、羊の飼育や農作物の栽培に利用される土地の割合が高い。南北を比較すると、北島の方が年間を通じて安定的に牛を確保しやすい環境にあり、工場稼働率の変動が比較的小さいことも、利益率の差が生じる要因の一つである。
[Q]:ボラティリティについて、海外事業の今後のポートフォリオの考え方
[A]:主要販売先である米国市場においては、今後2~3年で牛の供給量が回復し、牛肉相場が下落することによる影響を受けるリスクがあると認識している。
一方で、ニュージーランド産牛肉は牧草肥育による赤身肉の比率が高く、米国内で主流の穀物肥育牛とは異なる特徴を有している。近年は牧草肥育牛に対する評価も高まっていることから、当該リスクの影響は一定程度緩和されるものと考えている。
また、海外事業におけるポートフォリオについては、今回のM&Aは牛肉事業を対象としたものであるが、今後は牛肉に限定する考えではない。成長機会があれば、豚肉や鶏肉についても海外での事業展開を検討していきたいと考えている。
[Q]:Greenleaの今後の設備投資について
[A]:現時点では、更新投資を除き、大規模な設備投資を行う予定はない。
[Q]:運転資本管理に対する課題について
[A]:今中計期間においては、運転資本の増加が際立っており、これを適切に管理していくことが重要な課題であると認識している。Greenleaは在庫水準を含めた運転資金管理が適切に行われており、ANZCOと比較して運転資本負担は相対的に小さい状況にある。
ANZCOにおいて運転資本への影響が大きい事業としては、ヘルスケア・血清関連事業に加え、季節性の影響を受けやすい羊肉事業が挙げられる。これらの事業については、一定水準の在庫を保有する必要があるため、比較的運転資金を要する事業構造となっている。
また、牛肉事業においても、GreenleaはANZCOと比較して運転資本の運用効率が高く、今回の買収が運転資本に与える影響は限定的であると考えている。
今後の資本効率向上に向けては、会社全体のキャピタルアロケーションの観点から運転資本を適切に管理することが不可欠であり、継続的な改善に取り組んでいく考えである。
その上で、今回の買収に伴う資金調達規模については、ROE8%以上の達成を目指す中で必要なレバレッジ水準であると考えており、この規模感の中で適切にマネジメントしていきたい。引き続き、適切な財務規律を維持しながら、ROICの向上と収益性のさらなる改善を進めていく考えである。
[Q]:Greenleaの利益が過去3年間で減少している理由
[A]:Greenleaの利益水準が過去3年間において減少している理由は、大きく2点ある。
1点目は、市場環境の影響である。ニュージーランド北島において生体頭数が減少傾向にあったことから、事業環境に影響を受けた。ただし、2025年および2026年については頭数が回復傾向にあり、2026年の収益性は改善すると見込んでいる。
2点目は、中国経済の影響である。中国向け販売環境の悪化を受け、中国向け販売数量を他国向けに振り向ける対応を進めてきたものの、販売チャネルや顧客基盤の違いにより、ANZCOほど付加価値化ができなかったことで収益に影響した。この点については、買収後はANZCOの販売拠点および販売ネットワークを活用することで、一定程度対応が可能になると考えている。
[Q]:本件のEPSへの影響について
[A]:本件については、のれんの償却影響や資金調達に伴う金利負担を織り込んだ場合でも、EPSにはプラスの効果があると考えている。
[Q]:財務レバレッジの水準について
[A]:本件実行前の財務レバレッジは0.2倍程度の水準であり、本件の実行により0.5倍程度まで上昇すると見込んでいる。また、ROE8%の達成に向けては、適切な財務レバレッジの活用が必要であり、0.5倍程度の水準は従来から想定していた範囲内である。
今後については、基本的には現在の水準を維持することを想定しているが、個別案件の内容を踏まえて判断していく考えである。一方で、さらなるレバレッジの拡大については、信用スプレッドへの影響とのバランスを見極めながら判断していく。収益基盤の強化や拡大に資する案件であれば、もう一段踏み込んでレバレッジを活用することも選択肢となる。一方で、魅力的な投資案件がなければ、レバレッジを下げることも考えている。
財務レバレッジを管理する指標としては、D/Eレシオに加え、キャッシュフローベースのFFO/ネットデットやEBITDA倍率なども重視している。その上で、どの程度までレバレッジを活用できるかについては、コストを度外視すれば現在より高い水準も可能であると考えるが、実際には資金調達コストや調達環境の影響を踏まえる必要がある。そのため、一律に明確な上限水準を示すことは難しいと考えている。
[Q]:海外事業の方向性、戦略について
[A]:世界の食肉需要は今後も拡大すると見ているが、その中でも特に成長スピードが速いのは鶏肉であり、次いで牛ひき肉であると考えている。
牛ひき肉については、プレミアムなステーキ用部位と比較して購入しやすい価格帯であることから、今後も需要拡大が見込まれる。また、一人当たり食肉消費量の増加が期待される東南アジア、南アジア、アフリカといった地域においては、鶏肉に加えて牛ひき肉の需要も伸長していくと認識している。その中で、ANZCOおよびGreenleaは赤身率の高い牛肉を継続的かつ安定的に供給できることを強みとしており、加えてアジアの消費地に近いロケーションに位置していることも競争優位性の一つであると認識している。
また、当社は長年にわたり、日本向けの商品調達を通じて東南アジア各国の食肉事業者との幅広いネットワークを構築してきた。特に鶏肉分野においては、取引関係に加え、人的ネットワークや企業間の信頼関係を築いてきたことが当社の強みであると考えている。
今後、東南アジアにおいて需要拡大が見込まれることを踏まえ、同地域では鶏肉を中心としたポートフォリオの拡充を進めていきたいと考えている。
一方で、北米においても、Indiana Packersによる豚肉事業や、ANZCOによる牛肉・羊肉の販売事業を通じて一定の事業基盤を有している。また、取引先とのネットワークや実需家との直接的なつながりも当社の強みであると認識しており、こうした強みを活かしながら事業を展開していきたい。
以上のように、北米、日本、東南アジアを中心に、それぞれの市場ニーズに応じた商品を供給できる体制の構築を進めており、今後もこうした競争優位性をさらに高めていきたいと考えている。
これまでの当社の海外事業は、海外の食肉サプライヤーから商品を調達し、日本国内で販売するビジネスが中心であった。一方で、今後は海外で製造し、海外で販売する事業をより強化していきたいと考えている。当社グループは既に出資先を通じて海外で製造し、海外で販売する事業を展開している実績を有している。今後は、こうした既存事業に加え、各事業の強みを組み合わせながら、海外での販売をさらに強化していきたい。
当社の海外戦略におけるキーワードは「地産地消」である。地域ごとに根を張り、それぞれの社会に貢献し、地域のニーズに応えていくことを基本方針としている。その上で、日本国内の需要にも引き続き対応していく考えである。
また、特定の市場への依存度を高めることはリスクにつながるため、投資地域を分散するとともに、牛・豚・鶏といった畜種についても分散を図ることで、市場環境の変化に対応できる事業ポートフォリオを構築していきたいと考えている。