1980年代の危機的状況に比べ、順調に成長しているとはいえ、いまだタンザニアの経済状態は厳しく、最貧国であることに変わりはありません。国民総所得を意味するGNIは234億USドル(2010年データ)。これは日本の200分の1でしかなく、また、1人あたりのGNIも530USドル(2010年データ)と日本人の80分の1です。
この数字から、いかにタンザニアの人々の暮らしが困窮しているかを知ることができるでしょう。国内では主要産業としてクローブ、バナナ、キャッサバ、コーヒーといった農業が盛んであり、GDP(国内総生産)の45パーセントを占めています。
ただ、それで自立できているわけではなく、農作物のほとんどは自国での消費に充てられ、実際には海外からの資金援助で成り立っているのが現状です。こういった産業の少なさも貧困の要因のひとつであり、街には働きたくても仕事がない男性の姿も少なくありません。
一方女性は育児をしながらも農作業や家畜の世話などに追われています。また、子どもたちは、その母親の手伝いをするなど貧しさの中でもたくましく成長していく姿が印象的です。
栄養不良の子どもの多いタンザニアですが、子どもの数は決して少ないわけではありません。人口は1990年代から爆発的に増加しており、現在は4,622万人(2011年データ)。その約半数が15歳未満の子どもです。
5歳以上の子どもたちは笑顔を絶やすことなく、明るい表情を見せています。ただ、やはり5歳未満の子どもたちは、食事などの原因から常に栄養不良と隣り合わせで生活を送っているのです。
栄養不良の中でももっとも深刻である急性栄養不良は消耗症とも呼ばれ、体重が極端に少ないことを言います。この急性栄養不良は正しい診察、治療を受けずにいると最大で約半数が死に至るという危険な状態です。治療は現在、栄養価の高いプランピー・ナッツといった栄養補助食品と投薬により行われます。
かつては粉ミルクを使用していましたが、きれいな水であることや最適な分量、子どもに与えるための適切なタイミングなどいくつかのチェックと監視が必要でした。プランピー・ナッツは封を切れば、そのまま口に入れることができるため、簡単に栄養を摂ることができます。